新専門医制度の養成基準緩和【旧基準と新基準の違い】

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「新専門医制度」は、近年の医療界における大きな変化の1つ。
日本専門医機構が、2017年より制度を統括し、「新・専門医の第1号」も2020年には誕生する運びとなっていました。

 

しかし、2016年末時点においても、いくつかの大きな問題が残っています。

 

そのため、制度内容の細やかな調整が進められているのが現状です。
そのような中、「新専門医制度の養成基準緩和」のニュースが飛び込んできました。
このニュースは、今後の新専門医制度に対してどのような影響を与えるのでしょうか。

 

医師の皆さんにとっては無関係ではない「新専門医制度の現状と今後の展望」を知っていきましょう。

 

新専門医制度とは?

 

統合により「専門医の質」の安定化を図る狙い

転職などのキャリアデザインを考える方にとっても関心が高い「専門医資格」。

 

1つのみならず、複数の専門医を取得している医師も少なくありません。
現在のところ、トータルの国内専門医数は、約30万人となっています。(日本専門医制評価認定機構データより)

 

そもそも「旧専門医資格」は、各学会がそれぞれの基準を設け、専門医を認定する形をとっていました。
「日本麻酔指導医制度」(日本麻酔学会)が、我が国における旧専門医資格のスタートで、すでに50年以上、このような認定方法で専門医資格制度が運営されてきました。

 

「各学会がそれぞれの基準を設け、専門医を認定する形」で大きな問題となるのが、専門医の「質」における不安定さです。
症例数の蓄積や筆記試験など、かなり厳しい基準を設ける学会がある一方、講習受講で簡単に「専門医」を名乗れるケースもありました。

 

つまり、同じ「専門医」を名乗りながらも、技量やノウハウにバラつきがあるということです。

 

21世紀初頭より、このような「専門医の質における不安定さ」が問題視されるに至ります。
専門医に対する共通の指針がないため、何よりも患者側に混乱をもたらす、という点が懸念されました。

 

事実、2016年2月の社会保障審議会医療部会においても、この課題が指摘されています。
「現行専門医制度を各学会が独自運用しており、専門医の質の担保に懸念」「専門医の能力に対する、医師・国民間のギャップ」…この2点は「新専門医制度」が発足した動機とも言えます。

 

そこで組織された「日本専門医機構」が、新制度の運用に向け始動。中立な立場から、新・専門医の認定&養成を統合し、運営を担うことになりました。

 

「日本専門医機構」とは?

日本専門医機構」は、全国医学部長病院長会議・日本医学会・日本医師会などから成る組織です。

 

「良質な医療提供を目的とし、専門医の質を高めること」を掲げています。
「新専門医制度」のガイドラインを作り、運営をおこなう中心的存在です。

 

浮上する新たな問題

ここまでの話を聞く限りでは「新専門医制度」には、何の問題もないように思えます。
素晴らしいコンセプトであると感じる方もいらっしゃることでしょう。

 

しかし、新たな問題も浮上しており、スムーズな制度開始とはいかない様相を呈しています。

 

現時点で大きく懸念されているポイントは「新専門医の養成基準」です。

 

各方面から心配の声があがり、問題点も多いということで、日本専門医機構は、これまでの「整備指針」を撤回(2016年11月18日)。
新専門医制度下における「専門医育成の研修基準」などを見直し、新たな指針を策定する方針としました。

 

新専門医の今までの育成基準とは?

2016年11月18日、新専門医制度下における、これまでの「整備指針」は撤回されました。
つまり「新専門医育成の研修基準」に大きな問題があった、ということです。

 

撤回前の「新専門医育成の研修基準」では「研修施設に指導医がいること」が必須でした。

 

それでは「指導医」はどこにいるのでしょう?
新専門医制度の基準を満たす「基幹病院」のみです。

 

しかし、今までの「基幹施設の基準」は、大学病院や大病院以外への認定が難しい、大変厳しいものでした。

 

今までの育成基準の問題点とは?

 

「大学病院の専攻医集中」が与える地域医療へのダメージ

日本専門医機構の理事会(2016年11月18日)において、日本医師会から「要望書」が提出されました。
中でも強く要望されたのが「基幹施設基準の見直し」です。

 

大学病院以外の医療機関にも、専門医育成の実績や、それを満たす環境が整備されている場合があります。

 

しかし、新専門医制度における「旧・基幹施設の基準」では、専門医育成の場として認められない病院が数多く出る、と懸念されました。
その結果「基準を満たす施設のほとんどが大学病院や大病院」となる可能性も高くなってきたのです。

 

こうなれば、専門医を志す医師(専攻医)が、大学病院に集中することになります。
この事態が「医師の地域偏在」を加速させ、地域医療へのダメージを与えるとして、問題されました。

 

そもそも指導医が確保できない可能性

また「新専門医育成の研修基準」では「研修施設に指導医がいること」が必須でした。
しかし、医師不足の地域などでは、そもそも指導医が確保できないケースも少なくありません。

 

「基幹施設の基準」をクリアできても、指導医が確保できなければ意味がありません。
指導医の確保が激化すれば、せっかく基幹施設として認められた医療施設(市中病院、連携施設、地方病院)の負担も増大します。

 

これにより「大学病院の専攻医集中」が促進され、医療の地域格差をさらに生み出す元凶となるのでは、と危険視されていました。

 

その結果「基幹施設の基準」と共に「養成基準を緩和」も見直される運びとなっています。
事実、日本専門医機構のHPにおける「専門医 認定・更新」のページにおいても「現在準備中」との表示が出ています。

 

「改訂作業中」とのことで、大幅な調整作業がおこなわれていることが伺えます。(*HPの表示は2016年11月末時点)

 

新しい育成基準とは?いつ決まる?

 

「指導医のいない施設」でも研修できる方向に

2016年11月18日には、新専門医制度下「整備指針」の撤回が発表されました。
これにより「一定の条件を満たせば、指導医のいない施設でも研修可能」な方向で調整されます。

 

つまり、新専門医制度における「養成基準」が緩和されることになったのです。
同時に、事実上大学病院などに限定されていた「基幹施設の基準」も見直されます。

 

新制度の全面スタートは「1年延期」

当初、新専門医制度のスタートは2017年の予定でした。
多くの方は「本当に間に合うのか?」と感じておられることでしょう。

 

しかし、日本専門医機構はすでに、2016年7月20日の理事会において「新専門医制度の一斉スタートを、来年(2018年)に目指す」という新方針を打ち立てています。つまり、1年間の延期です。

 

日本専門医機構は、地域医療への影響にも配慮し、現場の声や実情を踏まえる形で、大幅な軌道修正を急ピッチでおこなっているようです。
現場を苦しめ、当初の理念から逸れた結果とならないよう、持続可能な制度となることが望まれます。

 

まとめ

これまでも、専門医の取得・更新において「医局や医療施設の人事」に左右されるケースが少なくありませんでした。
新専門医制度のスタートで、そのような問題点の解消を期待される方も多いことでしょう。

 

医療界は、現在「変革期」を迎えています。

 

キャリアの可能性を着実に広げるためにも、医師の皆さんにおかれましては「こまめな情報収集」を心がけてください。
いずれにせよ、今後も「新専門医制度の動向」を注意深く見守る必要がありそうです。

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